皆さん、こんにちは。編集担当のマキです。本日は山中先生編の後半です。
前半では先生にお持ちいただいた貴重な時計をwena 3に着けさせていただく様子を紹介しました。後半は先生にデザインいただいたwenaオリジナルのヘッドについてたっぷりお話しいただいた様子をお届けしたいと思います。ボリューム満点、特別インタビューとなっております!
このヘッドは、商品ページではこのように紹介しています。
(まだご覧になっていない方は商品ページも見てみてください)
世界の時間軸を手元に集約した、
世界とつながるための「フォー・イン・ワン」モデル
4つのダイヤルが組み込まれ、それぞれに独立したムーブメントを持っているのが特徴のモデルとなっています。4つのダイヤルは世界の様々な都市の時刻を見渡せるというコンセプトから、カラーバリエーションには「TOKYO」、「PASADENA」、「OXFORD」といった都市名を付けています。
と、ここまではご存じの方も多いかもしれません。
ここからは、どのようにしてこのモデルが生まれたのか、商品化するまでにどのような苦労があったのかなどなど、商品ページだけでは語り切れなかったところをお伝えできればと思います。
取材を開始し、さっそくお話をと思ったところ、先生の方からこの日のために事前に描いてくださったというスケッチを出してくださりました。
先生のInstagramにいくつかアップされているのは知っていたのですが、生スケッチを拝むことができてしょっぱなからテンションが上がります!
お話を伺っていくなかですごく印象的だったのが、説明をいただく時に常にスケッチを見せたり実際に手を動かしたりしながらお話しされることでした。
すごく優しく穏やかな口調でお話しされるのですが、口と同時に手が動いているというか、言葉に操られて手が動かされているというか、言葉と線が一体となって語られる感じがものすごく自然に受け手の中に入ってくる感覚です。
こんな素敵な感覚に包まれながら、まずは先生に4 in 1ヘッドの発想の出どころを聞いてみました。
最初は「繊細な電子部品とアナログウォッチの組み合わせがwenaの魅力」との考えから、たくさんのアナログウォッチがあると良いなと思ったとのことです。その時に描いたスケッチ(をその場で再現してくださったもの)がこちら。
まず、3つの小さなアナログウォッチのようなものがあって、そこからwenaの電子部品にそれぞれがつながって1つのものとして存在するというイメージがあったそうです。
それから、デザインのポイントとしては、サブダイヤルの存在感が先生のイメージとしては大事で、3つのサブダイヤルを120°ごとの三方に配置し、さらにそれがメインダイヤルに対して少し飛び出しているといった構造を初期のデザインから提案していただきました。
その時イメージされたものが左のスケッチで、実際の仕上がりは右です。
先生にも「わりとそのまま形になったね」とご納得いただけたのですが、実は最初に提案した時にはこのデザインは再現できないのではないかと思っていたとのことです。
一般的には1つのムーブメントで動かそうとするとサブダイヤルは中心に寄ってしまうので、三方に配置するための構造にするのも難しいし、さらにガラスの加工も難しいので実現の難易度はかなり高いだろうな、と。
しかし!そこは私たちの度胸の見せ所です。一度持ち帰り、チーム内で議論の末に腹を決めて「これでいきます!」と先生にお返事したところ、最初は「え、ほんとに!?」という感じでした。この時のリアクションの雰囲気や実際にお話しされている様子は予告編ムービーにも収録しているので、ここまで読んでいただいた後であらためてご覧になってみてください。イメージが伝わるかと思います。
デザインを実現するために、サブダイヤルにもそれぞれにムーブメントを付けることにしました。はじめは1つのムーブメントで検討してみたのですが、このデザインを実現できるムーブメントは世の中に存在しなかったのです(チームwena調べにより)。それならばと、逆転の発想でそれぞれに小さなムーブメントを付ける案を検討し、小さなムーブメントを探したところ、なとかケースに4つ収まりそうなムーブメントを見つけることができました。
ムーブメントを4つにするというのもまたかなりチャレンジングな試みでしたが、ムーブメントを独立させることでメインダイヤルから少し飛び出す形での配置を可能となったのです。(ガラス加工については後述します)
このように、難易度の高い構造の実現だけではなく細かいところで山中先生のデザインを再現できたのは製作を協和精工さんと組むことができたこともあげられます。数々の高級腕時計を製作されてきた実績のある協和精工の職人さんによる熟練の技術がなせる業によるところも大きいです。
例えば、りゅうずを取り付けるところが富士山のような形の曲線となっているのですが、この細かい部分ひとつとっても、手作業で丁寧に磨き出されていて、手に馴染むデザインを形にしています。(ちなみにこの部分の凹面は先生のデザインを良く知る方には、「らしいね」と言われる箇所のひとつだそうです。)
すばらしいデザインとそれを実現するための技術が詰め込まれているのが4 in 1ヘッドというわけです。
そんな先生のスケッチはもう1枚あります。こちらも紹介させていただきますね。
これはケースの構造やガラス加工のお話をしているときに描いていただいたものです。
先生に一番のポイントをお伺いしたところ、このサブダイヤルのガラス蒸着が絶妙に良い味を出しているところとおっしゃっていただきました。メインダイヤルに収まらずはみ出したところをどうやって再現するかというところは、設計メンバーもかなり頭を悩ませました。
文字盤とガラスの間にプレートを挟もうとしてみたり、ガラスの上にさらに球面ガラスを貼り付けてみたりと色々やってみたのですが、時計全体の厚みが出て野暮ったい印象になってしまうなど課題が多くありました。ああでもない、こうでもないと試行錯誤の末にたどり着いたのが蒸着という方法でした。
試作前はどうなるのかと内心ドキドキしていましたが、これがすごく上手くはまりました。
メインダイヤルに少しはみ出す形で蒸着されたサブダイヤルの部分に、斜めに光がさすことで影を落とし、非常に複雑な表情を見せるようになりました。一同、とても満足のいく仕上がりでした。
先生の狙いとしては、サブダイヤルが1つのダイヤルに収まらない何とも言えない緊張感というのをすごく大切にしてデザインし、それ以外の表現はなるべく抑えるようにしたとのことです。
4 in 1ヘッドはこれまでにwenaが発売してきた時計のなかでは径がかなり大きいモデルなのですが、デザイン要素をなるべくシンプルに抑えることによって、ゴツさを感じさせない、狙い通りの印象となっています。
バンドを付ける部分についても、先端部分のカーブの角度が少しだけ鋭角になるように工夫がされていて、これも設計チームから「なるべく手になじむように、バンド側に合わせてほしい」といったリクエストをさせていただいたものに上手く応えてくださったものとなります。
本当に細部に渡ってこだわりが詰め込まれています。自社商品なので手前味噌にはなってしまいますが、すばらしいです!!
このように、実現できるかどうか懐疑的になるほどの斬新なデザインをもとに、構造的にもギリギリのところを攻めて完成したのが4 in 1ヘッドです。全体の印象や先生のおっしゃる「絶妙な緊張感」などを感じていただくためにやはり実物をみてもらいたいです。
実物は全国のソニーストアなどでご覧いただけますので、ぜひお近くの店舗へ行ける方は足を運んでみてください。
※ご来店の際には 新型コロナウイルス感染拡大防止の取り組みとお願いをご一読ください。
以上、4 in 1ヘッドのご紹介でした。
さてさて、ここからは取材時のちょっとした話題などもせっかくなので紹介したいと思います。
こちらは4 in 1ヘッドの完成品を確認する先生のご様子です。
諸事情あって、取材日の12月中旬にようやく完成した商品をお渡しするこができました。
試作品はもちろん見ていただいていたのですが、完成品をご覧になるのは実はこの時が初めてでした。Twitterでも「デザインしたからといって誰よりも早く手に入るわけではないんです。」とつぶやかれていましたね。。。遅くなって申し訳ございませんでした。
すごく真剣にご覧になられていて、どうだろうかと少し緊張しながらコメントを待っていたのですが「すごくいいね」と微笑んでおっしゃっていただけました。自信をもってお届けできる商品に仕上がっています!
wena 3は発売以来、自分の持っている時計につけて使用されているお客様が多いようです。
でも、この4 in 1ヘッド、今後発売予定のカーデザイナーのジウジアーロさんにデザインしていただいたヘッドなどwena独自の魅力的なヘッドも実はたくさんあります。基本的にはバンドに付属しているエンドピース22mmに合わせたラグ幅で設計されていて、見た目もwenaのバンドにマッチするようなに意識してデザインしています。バンドとヘッドの相性・バランスがとても良いのでこちらも使ってみてくださいね。
wenaから発売しているヘッドはこちらでご紹介しています。
ちなみに、山中先生が時計をデザインされたのはwenaで6種類目だそうです。そして、ソニーとの取り組みは初めてとなるとのことでした。
ソニーには友人も多く、先生の代表作の一つである電車の自動改札機の中には当時のソニーのテクノロジーが入っていて間接的には関わったことはあったそうですが、これまでは機会がなくようやくご一緒できたと喜んでいただけました。
山中先生にはヘッドだけでなく、実はwena 3本体のインターフェースのディレクションもお願いさせていただき、先生からご紹介いただいた 岡本健デザイン事務所の岡本 健さん、飯塚 大和さんらにUI設計をしていただいています。(飯塚さんは先生の教え子さんとのことです。)
Suicaの対応で電車にも乗れるようになったので、四半世紀の時を経てかざす側と受ける側の双方で先生がデザインされたプロダクトがつながるという情緒を感じながら使ってみていただくのも一興かもしれません。
結びに、マーケティングチームの涌井さんと私は商品開発の時は直接お会いできず、取材日に初めて先生とお話しさせていただいたのですが、質問やお願いに優しく応えてくださって本当に素敵な方でした。
今回デザインしていただいた時計だけでなく、前半で紹介したINSETTOや過去の作品などのお話から、様々なつながりがあって成り立っているんだなというのを感じさせられるエピソードをたくさん聞くことができました。
私たちもお客様やビジネスパートナーとのつながりを大切にしながら、1つ1つ積み重ねて良い商品をお届けできるようにしていきたいなと、想いをあらたにする機会となりました。
山中先生、長い時間お話しいただきありがとうございました。
それでは、本日はこのへんで。最後まで読んでいただきありがとうございました。
次回もお楽しみに。
※本日ご紹介したヘッドは ソニーストアなどでご購入いただけます。
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